泌尿器科
Urology
前立腺肥大症について
benign prostatic hypertrophy
前立腺肥大症について
前立腺は膀胱の出口で尿道を取り巻くように位置するクルミ程度の大きさの男性特有の臓器で、精液の一部を作っています。前立腺肥大症は前立腺が大きくなることにより、尿道や膀胱が圧迫され、尿の勢いが弱くなったり、回数が増えたり、我慢しにくくなったりするといった症状を呈する良性疾患です。尿閉(全く尿が出ない状態)や尿路感染症、血尿の原因となることもあります。60歳以上の日本人男性の少なくとも7人に1人が治療を必要とする前立腺肥大症であると言われています。
前立腺肥大症の原因
前立腺肥大症の明らかな危険因子(原因)は加齢です。年齢とともに前立腺の体積は増加します。加齢の他に遺伝的要因、メタボリック症候群、ホルモンバランスの変化、炎症などとの関連が示唆されていますが、様々な要因が複合的に関与しているものと考えられています。
前立腺肥大症の診断
問診や国際前立腺症状スコア(IPSS)での評価以外に、尿検査、腹部エコー検査、尿流量測定検査(尿の勢いを測定する検査)、X線検査などの比較的簡単な検査で診断を行います。前立腺肥大症と前立腺癌との因果関係はありませんが、前立腺癌が合併している場合もありますのでPSA検査(血液検査)等の前立腺癌の検査も同時に行うことをお勧めいたします。
国際前立腺症状スコア(I-PSS)
どれくらいの割合で次のような症状がありましたか? | 全くない | 5回に1回 以下 |
2回に1回 以下 |
2回に1回 くらい |
2回に1回 以上 |
ほとんど いつも |
|
1 | この1ヶ月の間に、尿をした後にまだ尿が残っている感じがありましたか | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 | 5点 |
2 | この1ヶ月の間に、尿をしてから2時間以内にもう一度しなくてはならないことがありましたか | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 | 5点 |
3 | この1ヶ月の間に、尿をしている間に尿が何度も途切れることがありましたか | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 | 5点 |
4 | この1ヶ月の間に、尿を我慢するのが難しいことがありましたか | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 | 5点 |
5 | この1ヶ月の間に、尿の勢いが弱いことがありましたか | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 | 5点 |
6 | この1ヶ月の間に、尿をし始めるためにお腹に力を入れることがありましたか | 0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 | 5点 |
7 | この1ヶ月の間に、夜寝てから朝起きるまでに、ふつう何回尿をするために起きましたか | 0回 | 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回以上 |
0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 | 5点 |
IPSS の合計点数が0-7点の方は軽症、8-19点の方は中等症、20点以上は重症の前立腺肥大症の可能性があります。
軽症でも症状に悩まされている方、中等症以上の方は泌尿器科専門医の受診をお勧め致します。
前立腺肥大症の治療
前立腺肥大症と診断された場合には、まずは薬の治療から開始することが一般的です。薬にはα1遮断薬(ナフトジピル、タムスロシン、シロドシン)、PDE5阻害薬(タダラフィル)、5α還元酵素阻害薬(デュタステリド)、漢方薬、植物製剤などの様々な薬があります。効果の異なる薬剤を組み合わせることにより、当初は効果があるケースが多いのですが、薬では肥大症は完治しないため、生涯にわたり複数の薬を飲み続けることになります。また、薬を飲んでいても加齢とともに肥大症が大きくなり、症状が悪化する傾向にあります。
薬では症状が良くならない場合、薬を生涯飲み続けることを避けたい場合には手術療法をお勧めいたします。生涯、複数の薬を内服し続ける場合の経済的な負担と比較すると、早期に手術加療を選択された方が経済的な負担が少ない可能性もあります。
手術には①CVP(レーザーによる前立腺蒸散術)、②TURP(電気メスによる前立腺切除術)、③HoLEP(レーザーによる前立腺核出術)など日本泌尿器科学会より推奨されているいくつかの方法があり、肥大症の程度、年齢、症状の強さ、全身状態、患者様のご希望などを考慮して、適切な手術方法を選択します。当院ではこれまでTURP(電気メスによる経尿道的前立腺切除術)による手術を行ってまいりましたが、より負担の少ない手術として2022年6月より前立腺のレーザー手術(レーザー蒸散術:CVP)を導入し、治療の選択肢が増えました。CVPレーザー手術は前立腺の肥大組織を気化して消失(蒸散)させてしまう手術方法で、従来の電気メスによる切除術と同等の治療効果が見込めるうえ、より出血が少ないため、抗血小板薬など血液をさらさらにする薬を飲んでいても手術可能です。いずれの手術も通常、腰椎麻酔下に行い、腹部を切開する必要のない体に負担の少ない経尿道的内視鏡手術です。手術時間は約1時間程度、状況に応じて5日から7日間程度の入院が必要となります。
前立腺肥大症手術の日帰り対応は行っておりません
日帰りレーザー手術を行っているクリニックもあります。そのようなクリニックでは、手術後、尿道のカテーテルをいれたまま帰宅し、ご自身で術後の経過をみることになり、帰宅後に出血や発熱、また尿道カテーテル抜去後に尿が出なくなるなどトラブルがおこるケースもあります。手術後数日は炎症で尿道がむくむため、当院ではむくみがとれる手術後3日目をめやすに尿道カテーテルを抜き、排尿がしっかりできることを確認するまで責任をもって対応する必要があると考えております。そのため当院では日帰り手術には対応しておりません。
前立腺レーザー治療機(LEONARD180)
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